終戦後に一通の手紙が彼から届いた。
内容はこう
**************************************
明日、出撃が決まった。
ゴメン・・・。
見送りのときの約束守れそうにない。
結構長い間、帰れそうにないよ!
じゃ〜元気でね!
**************************************手紙を読んで私は
『知ってるよ・・・。ウソツキ・・・・』と漏らすと、涙が止まらなかった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
日本は身の程もわきまえず、大国と戦争をしていた。戦局は打開策を
見出せないまま泥沼化し、日本側の消耗戦となっていた。当時のメディア
が正しい報道をされていれば、敗戦色が濃厚なのは誰の目にも明らかだった。
しかし、局地的な勝利の情報のみを報道し、国民はその情報のみを耳にして
日本は勝っているんだと皆が思っていた。僕も軍に入るまではそう信じていた。
軍の訓練プログラムの工程を終了し、僕は2日間に外出の許可を与えられた。
外出の許可はずいぶん久しく貰っていなかった。僕はこの機会を利用して故郷へ
帰省した。
帰省するとどこで聞いたのか近所の人も集まっての大宴会だった。とは言っても
戦時中なので、大した料理は出ない。でもみんなが必死に食材や酒なんかを集め
てくれているのはわかった。わかるだけに少し気まずくも思った。
当時僕には恋人がいた。この戦争が終わった後に結婚するとお互いに約束を
交わしていた。軍に入る時、周りの人には国を守るためなんていっていたが、
実のところは彼女を守りたいという想いのほうが強かった。当然、僕一人が軍
に入ったところで戦争は早く終わるわけでもないし、彼女を戦火から守れるわけ
ではない。でも何もしないで待っているのが嫌だった。戦争も嫌いだが、その戦
争で大切な人が死ぬのも嫌だ。何もしないよりは、自分の出来ることをしようと
思い家族の反対を押し切って軍に入った。
宴会の席には彼女もいた。なかなか二人きりになれなかったが、宴会も一段落した
所でやっと二人きりになれた。
『向こうでは、元気でやってた?』
『それなりに元気でやってたよ。周りには気の合う仲間もいるし』
『ふ〜ん。じゃ〜寂しくやってるわけじゃないんだ』
『あっ・・・でも、君に逢えないから寂しいよ。』
『なに?その棒読みな感じは!ホントにそう思ってるの?』
『思ってるよ!なにいっちゃってるの!君からの手紙だけを励みに訓練を
乗り越えてこれたんだから!』
『調子がいいのは、軍に入っても治んないんだね!』
『まぁ〜教官でもそこは治せなかったって事だよ!』こんな感じで戦争についての話はせず、二人で離れていた期間の出来事を延々と
話し続けた。僕は彼女の話を聞きながら相槌を打ち、頷き、笑って聞き役に徹した。
彼女が自分の話を終えると急に寂しげな口調でこういった。
『今度はいつ逢えるの?』
僕は少し考えてこういった。
『また直ぐに逢えるさ・・・・。うん、きっとまた直ぐに逢えるよ!』そう言い返すと彼女はこう静かに言い返してきた。
『直ぐって・・・いつ?』僕は即答で
『直ぐは・・・直ぐだよ。待てない?』そうすると彼女は
『ううん。待てるよ・・・。聞いてみただけ』彼女はそういうと帰るといい僕は彼女を家まで送った。送る途中に彼女と一つ
約束をした。彼女を送り、実家に戻り家族に明日の午前中には帰りの電車で出発
する旨を伝え、眠りに付いた。
翌朝、家族に見送られながら電車に乗り地元の駅を出発した。母は家を出る際に
泣きながら、『生きて戻ってきてね』と一言だけ言った後は何も言わなかった。
父も僕の肩を叩き、『また、酒を飲もう』と呟き、僕は『うん』とだけ答えた。
電車が走り出しても両親は見えなくなるまでずっと手を振っていた。
電車にしばらく揺られた後に、家族と別れた次の駅で僕は一度降りた。その駅には
彼女が一人立って待っていた。昨日の夜に彼女とした約束は家族とは別に見送りを
したいというものだった。僕は電車から降りて30分後にやってくる間、彼女との会
話を楽しんだ。直ぐに時間は過ぎ、次電車がやってくるアナウンスが駅中に響いた。
『また、しばらくのお別れだね・・・』
『昨日も言ったけど、直ぐに逢えるよ。』警笛が鳴り始め、まもなくやってくることを二人に知らせる。この駅には僕ら以外誰も
いない。彼女は
『はい、お守りあげる!』というと飛び切りの笑顔で顔を近づけ、僕の唇にキスをした。キスをした後の彼女の頬は
少し薄紅色に染まっていた。そうこうしている間に電車は駅に到着した。
『じゃ〜またね!』と僕は近所に出掛けるような感じに彼女に向かって大きな声で言った。言い終えると電車は
ゆっくり走り出した。彼女も姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。
8月14日午前、僕は片道分の燃料と爆弾だけを抱えた戦闘機に乗っていた。前日、仲間の一人
に家族へもう帰らない旨を時期をみて伝えて欲しいと伝言を託し、彼女宛の手紙を作成した。
敵艦が遠くに見えてきた。攻撃目標だ。激しい対空砲火を潜り抜けながら僕は目標に向かって
ただ、一直線に向かっていった。
END